犬と猫の超音波診断ケースレポートTIPS FOR SMALL ANIMAL ULTRASONOGRAPHY

2022/09/06

超音波診断ケースレポート「1:肝膿瘍」

犬と猫の肝膿瘍の超音波所見

  • 孤立性腫瘤としてみられることが一般的だが、多発性腫瘤ないし結節の場合もある。
  • 病変内部のエコー源性は無エコーまたは低エコーあるいは混合エコーを示すことが多い(病変内部のエコー源性は病期により様々であり、発症初期は高エコーを呈し、時間とともに混合エコー、低エコー、無エコーに変化すると言われる)。
  • 病変の辺縁には境界不明瞭かつ不整な高エコーの壁状構造物が認められることが多い。
    膿瘍の内容物によって、病変後方に音響増強がみられる場合や、病変内部に重力方向へ沈殿する高エコーのスラッジ(細胞残屑)を伴うことがある。
  • 病変内部に音響陰影を伴う高エコー域や多重反射によるコメットエコーが観察される場合がある(ガス産性菌の感染による膿瘍の場合)。
  • 病変のサイズや内部所見が短期間(数日〜数週間単位)で変化することがある。

上記は肝膿瘍でみられることが多い超音波所見です。必ずしも肝膿瘍に特異的ではありませんが、これらの所見が得られた場合、鑑別診断の1つとして肝膿瘍が挙げられます。

肝膿瘍は超音波検査において肝実質内の腫瘤または結節としてみられますが、同じく肝臓に腫瘤や結節を形成する肝臓腫瘍や結節性過形成などと比べるとその発生は稀です。そのため、超音波検査で肝臓に腫瘤または結節を発見した際に肝膿瘍を鑑別診断として挙げることは少ないかもしれません。

しかし、肝膿瘍は決して激レア!というわけではなく、確かに稀な疾患ではありますが、しばしば遭遇することがあります。そして、肝膿瘍と肝臓腫瘍や結節性過形成では、当然のことながら、治療方針や予後が全く異なります。

上記の所見が得られたら、鑑別診断の1つとして肝膿瘍の可能性も考えてみて下さい。

残念ながら、超音波検査のみで肝膿瘍とその他の所見が類似する疾患(結節性過形成、腫瘍、血腫、囊胞など)を区別することは困難なので、肝膿瘍を疑う超音波所見が得られた場合、可能であれば病変の超音波ガイド下針生検の追加を検討してください。結果として細菌や好中球が検出されたら、ほぼ肝膿瘍と診断することができます(※確定診断には組織生検が必要です)。

また、肝膿瘍を発症する症例は、背景に易感染性となる基礎疾患(糖尿病など)を持っている場合があるため、臨床背景も併せて評価を行うことが重要です。

参考文献

  • HEPATIC ABSCESSES IN 13 DOGS: A REVIEW OF THE ULTRASONOGRAPHIC FINDINGS, CLINICAL DATA AND THERAPEUTIC OPTIONS . Vet Radiology & Ultrasound.1998;39(4):357-365.L A Schwarz , D G Penninck, C Leveille-Webster

  • Hepatic abscesses in cats: 14 cases (1985-2002).Jennifer S Sergeeff , P Jane Armstrong, Susan E Bunch. J Vet Intern Med 2004;18(3):295-300. 

  • Hepatic abscesses in dogs: 14 cases (1982-1994). J Am Vet Med Assoc. 1996 Jan 15;208(2):243-7. E T Farrar , R J Washabau, H M Saunders

  • Percutaneous drainage and alcoholization of hepatic abscesses in five dogs and a cat. J Am Anim Hosp Assoc. Jan-Feb 2005;41(1):34-8. Andrea Zatelli , Ugo Bonfanti, Eric Zini, Paola D’Ippolito, Claudio Bussadori

お問い合わせCONTACT

弊社サービスについての質問やご依頼など、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせフォームかメールよりお受付しております。

営業時間 AM9:00〜PM5:00
(定休日:日曜/祝日)
お問い合わせフォーム