⽝と猫の画像診断Q&AWHAT IS YOUR DIAGNOSIS?

2024/04/25

画像診断Q&A「9:左後肢の跛行③」

症例

  • 雑種犬、14歳齢、避妊雌、体重10kg。
  • 1ヶ月前から徐々に進行する左後肢の跛行を主訴に来院した。
  • 股関節X線画像を撮影した結果、左大腿骨骨幹の遠位に浸透状の骨溶解像(黄○)と層状骨膜反応(黄矢印)が認められた。

 

  • 図1:左股関節ラテラル像の拡大図
  • 図2:股関節VD像の拡大図

問題

  • この所見から考えられる鑑別診断は何か?
画像診断医(以下:画)
画像診断医(以下:画)

侵襲性の骨病変であることがわかったところで、次はどのように鑑別していきますか?

研

病変が大腿骨の遠位にあるので、骨肉腫が疑わしいと思います。

画

その他は鑑別にはいりませんか?

研修医(以下:研)
研修医(以下:研)

うーん、骨髄炎でしょうか?

画

骨髄炎ですか。確かに骨髄炎は否定はできませんが...先生は鑑別を考えるときに病変の数は考えましたか?

研

はい。1カ所なので単骨性と思います。

画

撮影範囲ではそうですね。病変が単骨性か多骨性でおおまかに鑑別が分けられましたね。では位置は骨肉腫や骨髄炎の好発部位で合っていますか?

研

骨肉腫の好発部位は前肢では近位の上腕骨、遠位の橈尺骨で、後肢では遠位の大腿骨、近位の脛骨に多いので位置は合っていると思います。骨髄炎はどの位置でもよいので鑑別には入ると思います。

画

なるほど。骨肉腫の好発部位の近位や遠位というのは具体的には長骨のどの部位ですか?

研

長骨の部位ってなんですか?

画

長骨は骨端、骨幹端、骨幹の3部位にわけられましたよね?この症例では病変はどの位置にありますか?

研

骨幹にみえます。

画

そうですね。先ほどの骨肉腫や血行性の骨髄炎は骨幹端によく見られるので、少し位置がずれています。骨幹にも病変が見られるものとしては転移性骨腫瘍も鑑別にあげられますね。あとは症例のシグナルメントやヒストリーをあわせて評価していくことになりますが、この症例の年齢や犬種はどうでしょうか?

研

高齢の中型犬です。

画

原発性骨腫瘍の好発年齢や犬種はどんなパターンが多いとされているか覚えていますか?

研

高齢の超大型や大型犬で、セントバーナードやグレートデンなどが好発犬種です。

画

うーん、その回答だと70点くらいでしょうか。原発性骨腫瘍の好発年齢はピークが2つあるとされていて、1つは1〜2歳で小さなピークがあり、もう一つは7歳くらいに大きなピークがあります。犬種に関しては先生があげてくれた超大型や大型犬に多く、成長スピードや体重負荷との関連が示唆されていますね。

研

犬種や年齢は症例とはちょっと合わないですね。原発性骨腫瘍ではない気がしてきました…

画

では転移性骨腫瘍について考えてみましょうか。年齢については、中央値で10歳と原発性骨腫瘍の好発年齢と比較してピークがやや高齢で、体格については25kg以下であることが多かったと報告されています。ちなみに骨転移の原発巣となるような腫瘍にはどんなものがあげられますか?

研

ええと、前立腺腫瘍や移行上皮癌などです。

画

そうですね。以前の報告では前立腺癌、移行上皮癌、乳腺癌や肺腺癌が原発巣として多かったと報告されていますが、実際には原発巣の特定ができないものも多かったようですね。

研

乳腺癌…あ!既往歴に子宮蓄膿症と乳腺腫瘍の部分切除がありました。乳腺腫瘍が悪性だったかはわかりませんが...

画

乳腺腫瘍がありましたか。人の研究では乳腺癌の終末期の患者のうち70%程度に骨転移が認められると言われており、犬では10〜20%ほどと報告されていますが、犬では骨転移があっても無症状のこともあり、実際にはもっと多いのではないかと言われていますね。次回既往歴なども詳しく聞いた上で、骨病変の細胞診検査や胸部X線検査の追加を勧めてみるのもよいかもしれません。

後日……

研

細胞診検査の結果は上皮性悪性腫瘍で、既往歴から乳腺腫瘍の転移が強く疑われるということでした。追加検査で行った胸部X線検査では肺や胸壁の複数の結節(上図1/ 肺結節:赤○、胸壁の結節:赤矢印)と胸骨リンパ節の腫大(上図2/ 橙矢印)がみられ、こちらからも上皮系細胞が採取されたそうです。

画

そうですか...今回の症例のように転移性骨腫瘍のある患者の中には跛行以外の症状がない場合もあるので、骨病変だけではなく病変のある位置や数のほか、ヒストリーと合わせて総合的に判断していくことが大切ですね。

問題に対する解答

  • この所見から考えられる鑑別診断は何か?

大腿骨遠位骨幹部に単骨性の侵襲性病変を認め、転移性骨腫瘍および典型的ではないが骨原発性腫瘍が鑑別に挙げられる。骨髄炎の可能性は低いが否定はできない。

     

    問題に対する診断のポイント

    病変の数や発生部位から鑑別リストの順位をつける

    • 単骨性/多骨性
    • 骨端/骨幹端/骨幹
    • 年齢、体格、既往歴

    まとめ

    • 転移性骨腫瘍のケースでも跛行のみを主訴に来院する場合もあるため、単骨性の病変であっても原発巣が別にある可能性も考えておく必要がある。
    • 犬の転移性骨腫瘍の原発巣として多く報告されているものに、乳腺癌、移行上皮癌、前立腺癌、肺腺癌などがあげられるが、原発巣が特定できないケースも存在する。
    • 転移性骨腫瘍の年齢の中央値は10歳齢とされ、体格については25kg以下であることが多いと報告されている。
    • 転移性骨腫瘍の長骨への転移は長骨では上腕骨や大腿骨の近位骨幹端が多いとされているが、その他栄養孔周囲の骨幹部にもみられることがある。

    文献リスト

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