症例
- フレンチ・ブルドッグ、13歳、去勢雄、体重2kg。
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内科療法への反応に乏しい、2ヶ月前からの血尿を主訴に来院した。
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腹部X線画像を図1~2に示す。
- 図1:右ラテラル像
- 図2:VD像
問題
- X線画像上の異常所見は何か?
膀胱内に微細な石灰化陰影があります。砂粒状の膀胱結石のようにも見えますが、結石にしては形が歪なのと膀胱内で分散しているのが少し変ですね。それを考えると膀胱壁が石灰化している可能性が高いと思います。膀胱移行上皮癌でしょうか。
なるほど。ところで、その病変の頭側にある円形状の軟部組織陰影は何でしょう?
全然気がつきませんでした。膀胱に移行上皮癌がありますし、腫大したリンパ節ですかね?だとすると、かなり大きいことになるので、リンパ節転移が疑わしいです。
頭側の陰影が膀胱の可能性はないですか?
石灰化を伴う陰影があまりにも膀胱っぽかったので、膀胱と決めつけて鑑別を進めてしまいました・・・。もしも頭側の陰影が膀胱だった場合、尾側の陰影が前立腺で、それが腫大・石灰化している可能性を考える必要がありますね。
はい。2つの陰影の境界部分をよくみると脂肪陰影を主体とした三角形上の領域があります。これは通常、膀胱と腫大した前立腺の間にみられる陰影と類似していて、2つの陰影が膀胱と前立腺であることを示唆しています。
正常像と比べると分かりやすいですね。
問題に対する解答
- X線画像上の異常所見は何か?
下腹部に石灰化を伴う軟部組織腫瘤(オレンジ)と石灰化を伴わない、やや不明瞭な軟部組織腫瘤陰影(水色)が認められる。これらの間に脂肪陰影を主体とした三角形上の領域(白線)が介在している。
- 図3-4:右ラテラル像(下腹部の拡大像)とそのシェーマ
問題1に対する診断のポイント
- 雄犬の下腹部に2つの軟部組織腫瘤陰影が認められ、それらの間に三角形状の脂肪組織が介在している場合、頭側の陰影が膀胱、尾側の陰影が前立腺である可能性を考慮する。
では、膀胱と前立腺の組み合わせである可能性を考慮しながら、超音波検査で詳しく見ていきましょう。
はい!
難治性の血尿がみられるということですね。それではX線画像上の異常所見を挙げてみてください。