犬と猫の画像診断Q&AWHAT IS YOUR DIAGNOSIS?

2023/12/07

画像診断Q&A「8:猫の副腎腫瘍」

症例

  • 雑種猫、11歳齢、避妊雌
  • 食欲不振、間欠的な消化器症状を主訴にかかりつけ医に来院し、腎臓腫瘤を指摘され紹介受診した

  • 腹部X線画像を図1~2に示す。

  • 図1:腹部VD像
  • 図2:腹部ラテラル像

問題

  • X線画像上の異常所見は何か?
研修医(以下:研)
研修医(以下:研)

腎臓腫瘤が疑われている症例ですね。ふむふむ。

画像診断医(以下:画)
画像診断医(以下:画)

猫は比較的腹腔内脂肪が多く、臓器と脂肪のコントラストがつきやすいので、X線がみやすいですね。

研

そうですね。V字マットをつかっていないので、臓器がばらけていて見やすいです。

画

さて、腎臓はどうですか?

研

あれ?どちらの腎臓もしっかりと陰影が確認できます…辺縁の不整や腫大、萎縮もないようですし……

画

腹部全体をもう一度ちゃんと見てみましょう。

研

…???!!!!!!左腎が!!!!2つあります!!!!!!

画

そんなわけないでしょう。左腎内側に腫瘤影がありますね。由来臓器としてなにがかんがえられるでしょうか。

問題に対する解答

  • X線画像上の異常所見は何か?

左腎内側に腫瘤影を認める。腫瘤の辺縁はやや不整である。

  • 図3-4:図1−2の拡大像
画

由来臓器、考えられましたか?

研

ラテラル像においても腎臓の近傍に位置するので、後腹膜臓器を考えました。左腎リンパ節、左副腎、左尿管などでしょうか。

画

そうですね。超音波検査で確認してみましょう。

その後の経過

追加検査として腹部超音波検査を実施したところ、左副腎が腫瘤化し、低エコーを呈していた。左副腎とする根拠は大動脈から分岐する腹腔動脈と腸間膜動脈の尾側に位置することである。なお、左腎に異常所見は認められなかった。

猫の副腎腫瘍のまとめ

・猫の副腎腫瘍では機能性の腺腫や腺癌が多く報告されており、褐色細胞腫はまれな疾患である。

・機能性副腎腫瘍では高アルドステロン血症の症例が多く、その他にコルチゾールや性ホルモン、あるいはそれら複数のホルモンの分泌能を有する腫瘍が認められている。

・猫では、犬やヒトと異なり偶発腫が少なく、高アルドステロン血症が背景にある場合、低カリウム血症やそれに関連した虚弱が見られることが多い。

・現時点では猫において血管浸潤などの画像上の所見と腫瘍のタイプとの関連性は報告されていないため、最終的にはホルモン検査や病理検査など総合的に評価する必要がある。

文献リスト

Gideon Daniel,Orla W Mahony,Jessica E Markovich,Elizabeth Appleman,kelli Weaver,Andrea Johnston and Bruce Barton:clinical findings,diagnostics and outcome in 33 cats with adrenal neoplasia(2002-2013). Journal of Feline Medicine and Surgery 2016 Feb;18(2):77-84

Anais Combes,Pascaline Pey,Dominique Paepe,Dan Rosenberg,Sylvie Daminet,Ingrid Pitcuyps,Anne-Sophie Bedu,Luc Duchateau,Pauline de Fornel-Thibaud,Ghita Benchekroun and Jimmy H Saunders:Ultrasonographic appearance of adrenal glands in healthy and sick cats. Journal of Feline Medicine and Surgery 2013 Jun;15(6):445-57

Sally Griffin:Feline abdominal Ultrasonography:What’s normal? What’s abnormal? The adrenal glands. Journal of Feline Medicine and Surgery 2021 Jun;23(1):33-49

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